2015年3月18日水曜日

カヴェルナ評(アグリコラからカヴェルナを眺めた時)


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カヴェルナ
最初に英語版を遊ばせてもらった時に受けた感じでは、「”Agricola2.0”ですよ」という評価だったのだが、何回かプレイし、過去作(アグリコラ、ル・アーブル、祈り働け、アグリコラ牧場の動物たち)と比較すると「2.0ってのはちょっと間違った表現だったかも」と思い始めてきました。
そこで、カヴェルナについて改めて文章でまとめてみたいと思います。
先にあげたUwe過去作のグループ分けをするなら、|アグリコラ|ル・アーブル→祈り働け|アグリコラ牧場の動物たち(以下フタリコラ)|だと思っています。ル・アーブルはアグリコラにあった欠点(①得点システムと農場作りとの噛み合わなさ②非公開情報の多さ③その影響力の大きさ)を極力なくした作品で、①得点をすべて金銭換算で行うことでわかりやすくし、②建物は出現順がランダムだがほとんどが公開されており、③基本的に出現する建物はほとんどが共通なので、カードに振り回される感覚がないというような感じになっています。私の中ではル・アーブルはこれら収穫系作品のブラッシュアップ版と位置づけています。
そして、ル・アーブルから失われた自分のボードを組んでいく感覚(箱庭感というんだろうか)をくっつけようとしたのが祈り働けなんじゃないか。(祈り働けに関してはやりこんでないので自信はないのだけど)
フタリコラはアグリコラの手札をなくして公開された特殊能力(建物)の獲得競争を入れたもので、実はこれがカヴェルナに一番近いように見えます。(実際、デザイナーズノートを読む限りだと、カヴェルナの後に制作されたらしいので近くて当たり前だったりします。)
こうやって見ていくと、アグリコラがやっぱり変わった位置づけになっていて、個々に配られた非公開の14枚の手札が大きくプレイヤーの動向及びゲームの勝利条件(点数上限というのか)に影響を与えているボードゲームっていうのは、ボードゲームというよりはカードゲームと言うべきなんじゃないかな。それが良いとか悪いとかいう話ではなくて。(ということから、2016年版アグリコラはカードゲームとして正統なまとめ直しをしてると私は思います)
では、カヴェルナは…というと、さきほど「アグリコラってカードゲームじゃね?」といっておきながら、こう言うのも変ですが、アグリコラの持ってたボードゲームの部分を伸ばすための新しい要素を加えたゲームだと結論付けておきましょう。
アグリコラだけがもっている要素というのはなんなのか?
ル・アーブル等の作品との比較で見れば、「盤面に1補給される間にリソースを集める回数の増加(要はワーカーの数の増加a.k.a手数)がプレイヤー間で不均衡になること」です。
”探索”は、この要素を強調するものになっています。

ワーカーの種類として武装したワーカーが登場し、そのワーカーのみで行えるアクションスペースとして探索が出現しました。
探索では、冒険の結果として報酬が得られます。探索に行った回数に応じて武装の段階が上昇し、報酬もより多様な選択ができるようになっていきます。(はじめは木材と犬、石などだが、何度も探索に行くと動物の繁殖や種まきなども行えるようになる)
しかし、武装したワーカーは配置に制限がかかり、武装していないワーカー→武装ワーカー(武装段階低→高)の順に配置しないといけなくなります。この制限はアグリコラにおいて大正義だったワーカー数の最大化という方向性に弱点を与える意味があります。
非常に単純な話を例にすると、○を非武装ワーカー、●を武装ワーカーとします。
PlayerA(先に置く) 1● 3● 5●
PlayerB(後に置く) 2● 4● 6●
この場合AはBよりも多くの探索アクションスペースにワーカーを置くことができるでしょう。
この後、Aが先にワーカーの数を増やすと
PlayerA(先に置く) 1○ 3● 5● 7●
PlayerB(後に置く) 2● 4● 6● という状況になり、
Aはスタートプレイヤーであろうが、そうでなかろうが必ずBの後に武装ワーカーを置くことになることがわかるでしょう。つまり、多くの武装ワーカーを有効活用しようとすればするほど、ワーカーの数は少ないほうが探索マスの先置き競争には有利となるということです。(実際は武装コマを探索に行かせなかったり、ルビーでの配置順変更があるのでもう少しややこしいですが)
探索のアクションを利用する/しないという、武装/非武装の差もありますが、アグリコラと比較すればワーカーの数をどれくらいにするのかという選択をカヴェルナは提供できています。
アグリコラではプレイヤー間で不均衡となったワーカーの数がもたらす有利不利は、多くの場合「ワーカーの多い方が有利でワーカーの少ない方は不利」となっていました。つまり、ゲームの大きな特徴がゲームの流れに変化を与えられていなかったのです。探索はこの問題を楽しいフレーバーと共に解消しています。

次に共通になった特殊能力タイル(建物タイル)について、これは牧場の特化を可能にしました。
アグリコラでは、手札という自分だけの領域があったため、この手札に関しては他人にどうこうされずに考えることが出来ました。例えば、あなたが手札に得点カードを持っていた場合、このカードを他人に取られてしまうということはありませんでした。これは手札から戦略を安定的に組み立てられるので良さそうに思えます。しかし、このことは直接的に得点を1枚で稼げてしまうカードを抑制することになっており、結果は大抵の得点カードには得点に上限(2点)が定められていました。このため、手札から生み出せる得点には自ずから限界が生じ、アグリコラでは特化よりはある程度平均化した形が多くの場合正解となっていました。(証拠として、1枚で大量に点の稼げる”ほら吹き”は強いカードの一つだというのは多くのプレイヤーが認めるところでしょう。)プレイヤー個々人に個性的なカードを配ると、逆にゲームとして個性に首輪を付けなくてはいけなくなったのです。
しかし、カヴェルナでは部屋タイルは共通でだれでも獲得できる様になっているため、誰かが目標の点数タイルを最大化するためのプレイをしたとしても、そのタイルを他の誰かが先に獲得してしまうという対抗手段を取ることができます。このリスクがあるために、カヴェルナでは多くの点数タイルに最大点数が定められていません。特化型のプレイをゲーム側が許容できるようになったのです。特化した部分の得点化を安定して行うには、拡大再生産の腰を折って、得点タイルを取る必要がある。ここらへんの得点と成長のタイミングはゲームの悩みどころの一つとなっています。
個々人に個性を撒くのではなく、共通のタイルから獲得することによって特化の先のゴールを競争可能にし、プレイヤーに選択肢を与えるように変更されたのです。
これらの要素を考えると、アグリコラのまとめ直しではなく、アグリコラのカード以外の魅力を全面に押し出したゲームになっていると思います。まさにカヴェルナは「アグリコラのボードゲーム版」といえるのではないでしょうか。
非公開の要素がなくなったおかげで、アグリコラよりもプレイの面では格段に遊びやすくなっています。初心者にはアグリコラよりもこちらオススメ!と言っていいくらいに。ただし、ルールはアグリコラのルールに更にルールを重ねたものになっているので、いきなりカヴェルナ!と誘うのに壁があるのは惜しいことだと思います。
(戦略やリプレイ性に関しては更にやりこんでから考える段階なのかなと思っていますので、今回はこんな具合で〆)

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